父と50年ぶりの再会⑦
残酷な結果
ホテルの前に、軽自動車が止まった、
年配の男性が乗っている。
お父さん、
声を掛けることができず、立ち止まってる私、
数分しか経ってないのに、長い長~い時間に感じる。
車を駐車場に止めて貰うために、声を掛けてみる。
その時のお父さんと交わした会話、
長年想像していた感じとは全く違ってた。
温かくない、
50年ぶりの父と娘の涙の対面で、抱き合って泣いて、言葉にならない、
そんなのドラマのシーンで、実際は普通に普通の会話をしている。
何かがおかしいけど、それが普通。
熱く込み上げてくるものも全くない。
それよりも、この後どうしたら良いのかが不安。
夫は、車を止めに行ったまま、帰って来ない。
おそらく、気を使ってくれているのだろう。
50年ぶりの再会は、二人の方が良いと思って。
それに、実は夫も、私と同じで父の顔を知らずに育っている。
私と同じように、戸籍をたどり、3年前に父親を見つけたが、
夫と父親は、すでに他界していた。
私の前では、『仕方ないわ』と、平然とした態度だったけど、
その後、自分の部屋で泣いてた。
その姿を見て、何も言葉をかけられなかった。
同じように、見つかった私の父だけが生きてるのは、申し訳ないって気持ち。
それもあって、父を見つけてから、今日までに、3年がかかっていた。
夫は、私と父の再会のシーンに立ち会ったら、自分のことのように嬉しくて泣いてもくれただろうけど、
悲しさも辛さも味わってしまうから、私も離れててくれた方が良いと思ってた。
でも、今は違う。
早く、帰って戻ってきて、一緒にいて欲しい。
心の中で、叫んでた、
ホテルのスタッフの方が、中に案内してくれた。
外は暑いから、気にかけてくれてたんだろう。
『何か食べられますか?』と、聞いてくれた。
父は、『もう、食べて来たから、飲み物だけで。』と答えた。
この時、思った。
短時間だけ、だね、
二人でテーブルに、座った。
私は、前に座っている父の頭から、足の先まで、見つめてた。
似てるだろうか?
私と母(毒親)は、全く似ていない。
だから、父とはそっくりじゃないとおかしい。
でも、似ているところが、見つけられない。
私、背がたいけど
父は低い
男のひとだから、年老いてるから、顔は変わったかな、
私の息子に似てるような、感じもしなくもないかな、
と、思ったので、そのまま口に出してみた。
『私の息子に似てますね、』と。
父は首をふった。
その意味がわからない、
そのあと、父が『過去のどんなことを知りたい?』と、私に聞いた。
手紙に、『私の過去を知りたい。』と書いて送ったので、父はその事を言っているんだろう。
私は、父と会うことで、自分のルーツや遺伝子が知れると思ってたから、そう書いたつもり
でも、父は全く違うことを言ってる、
ここで、私の違和感が本物に変わった。
私が母(毒親)のことを、少し話した。何を話したか覚えていない、
父の顔色が変わった、
『生きてるのか?それなら、何も言えない。』と言った。
無言の時間…
父は、そわそわしていた。
無言が耐えられなくなったのようで、
『死んだから会いに来たのだと思った。』と本音を話してくれた。
その後、父が重い、重い、口を開いて、
私の過去を語ってくれた、
お母さんが、ある日、友だちから赤ちゃんを貰って来て、
私の籍に入れて欲しいと言った。
破天荒な女性だとは思ったが、
よほど、子供が欲しかったんだと、気の毒にさえ思い、私の籍に入れたんよ。
私は、その友達(あなたの母)のことは、全く知らないので、どこの誰かを知っているのは、お母さんだけで、誰も知らないと思う。
時が止まった。
いったい、私はだれ?
母だと思ってた、あの女の人は、いったいだれなん?
怖かった。何もかもが、怖かった。
今まで生きてきた50年間が、走馬灯のように私の頭を駆け巡った。
母だと思ってたから、実母だと思ってたから、
耐えてきたのに、
実母と思ってたから、助けてきたのに、
あの人は、赤の他人、
考えれば考えるほど、怖い。
『藁の上からの養子』
私は、初めてこの言葉を知った。
このあと、父と他愛ないことを、笑いながら、普通に話してた私がいた。
この時、私は、
完全に、人格を解離したと思う。
今を生きる、『sora』
そして、インナーチャイルド
『みゆきちゃん』
じゃないと、
この先、生きていけないから。
つづく。
ぼちぼち書いてます🍀